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マインドフルネスによる痛み改善のエビデンス

マインドフルネスが痛みに与える影響を見てみましょう。これは古くから研究され、MBSRの初期の研究は疼痛が対象でした。

MBSRと疼痛

マインドフルネスストレス低減法(MBSR)が痛みに与える効果についての研究を見てみましょう。これは、いろいろな研究をまとめたシステマティック・レビューです。

Mindfulness-Based Stress Reduction for Treating Low Back Pain: A Systematic Review and Meta-analysis: Annals of Internal Medicine: Vol 166, No 11 (acpjournals.org)

短期的な効果に関しては、MBSRは通常のケアよりも優れているというエビデンスがいくつかあります。しかし、他の積極的な方法(アクティブ対照群)と比べると、ほぼ同じ程度の効果です。
この研究は2017年のもので、質の高いシステマティック・レビューとメタ分析です。全体的に、MBSRは特に腰痛などの痛みに対して通常のケアよりも効果があるとされていますが、他のアクティブな介入と比べて必ずしも優れているわけではありません。

マインドフルネス介入と疼痛

マインドフルネスストレス低減法(MBSR)に限らないマインドフルネスに基づいた介入が痛みにどう影響するかについて、いくつかの研究を見てみましょう。痛みには色々な測り方がありますが、一つは痛みの強さ、つまりどれだけ痛みを感じるかです。


PAIN-D-19-00736 1698..1707 (katadynamin.com)


これまでの研究をまとめたシステマティック・レビューでは、マインドフルネスによる介入が痛みの強さに影響を与えるエビデンスは見つかりませんでした。
病院での治療や実験での研究では、例えば氷水の中に手を入れてどれだけの時間耐えられるかなど、痛みをわざと起こして調べることもあります。
臨床研究での効果量(Hedges’ g)は0.52で、これは中程度の効果量です。ただし、結果に確実性がありません。まだ十分な研究が行われていない可能性があります。今後の研究で、統計的な精度が向上し、信頼区間が狭まることが期待されます。


痛みの耐性に関する研究では、実験でのマインドフルネスによる介入が有効だったことがわかりました。痛みにどれだけ耐えられるか、またその痛みの限界はどこかということです。例えば氷水の中に手を入れてどれだけの時間耐えられるかなど、痛みをわざと起こして調べた結果、有益な効果があったのです。


痛みの苦痛に関しては、臨床や実験研究でマインドフルネスによる介入の効果を示すエビデンスはありませんでした。ただし、実験研究の効果サイズ0.44は中程度です。今後の研究がどのような結果を示すかを見守る必要があります。


マインドフルネスによる介入のエビデンスの質は、痛みの耐性を除いて、低いか非常に低いとされています。痛みの耐性を増加させるエビデンスは中程度ありますが、痛みの閾値に対するエビデンスは弱いです。これが、少なくとも2020年時点でのマインドフルネスプログラムの疼痛に対するエビデンスの質です。

痛みの強さの研究

マインドフルネスによる介入全体、特に慢性腰痛を患う人々の痛みの強さに焦点を当てた、2022年に出版されたこのシステマティックレビューを見てみましょう。


Meditation-Based Therapy for Chronic Low Back Pain Management: A Systematic Review and Meta-Analysis of Randomized Controlled Trials | Pain Medicine | Oxford Academic (oup.com)


対照群の人たちと比較すると、いくつかの研究で良い結果が見られます。効果量は約0.45で、これは中程度の効果と言えます。つまり、少しから中くらいの効果があり、統計的に意味があるということです。
認知行動療法などの他の積極的な治療方法と比べると、マインドフルネスに基づく介入の効果はほぼ同じで、効果量は0.1です。0.2は小さな効果量を示しますから、これは非常に小さい効果と言えます。これが、慢性腰痛を持つ人たちの痛みの強さに関する一般的な傾向です。

マインドフルネスプログラムと疼痛による機能障害

痛みに関連する障害に対するマインドフルネスの影響を見ると、痛みの強さと似たような結果が見られます。

Meditation-Based Therapy for Chronic Low Back Pain Management: A Systematic Review and Meta-Analysis of Randomized Controlled Trials | Pain Medicine | Oxford Academic (oup.com)

どのグループと比較しても、効果の大きさは0.34で、これは小さな効果から中程度の効果と言えます。特に他の積極的な治療方法と比べると、効果の大きさは0.15で、これは小さい効果です。信頼区間には無効であることが示されていますが、少しの差はあります。これからどんな研究結果が出るかは注目されますが、これが痛みに関連する障害に対する現時点での見解です。

認知行動療法との比較

マインドフルネスストレス低減法(MBSR)と、疼痛管理でよく使われる認知行動療法(CBT)を比較すると、両者は似たような効果があることが分かります。そのため、疼痛を管理する方法として、認知行動療法(CBT)かマインドフルネスストレス低減法(MBSR)のどちらかを選ぶことができます。


Comparative evaluation of group-based mindfulness-based stress reduction and cognitive behavioural therapy for the treatment and management of chronic pain: A systematic review and network meta-analysis – PMC (nih.gov)

結論

CBT(認知行動療法)とMBSR(マインドフルネスに基づくストレス低減法)は、効果が似ているかもしれないという研究があります。これは、マインドフルネスのプログラムが、痛みを感じることや痛みに耐える力を改善するのに役立つかもしれないということです。


例えば、私たちは痛みを感じたとき、それにどう反応しているかを意識することができます。痛みにとらわれすぎるのではなく、痛みがあることを認めつつも、心を他のこと、例えば大切な人や仕事などに向けることができるかもしれません。


マインドフルネスは、痛みを和らげるのに役立つかもしれません。自分がどういう状態のときに痛みをあまり感じないのかを理解し(自己認識)、運きや姿勢を調整することで、痛みを減らす工夫ができます。もちろん限界もありますが。


慢性の痛みはとても辛いものです。そんな時、マインドフルネスで痛みを認識し、それとどう向き合うかという関係性を見つめ直すことができます。例えば、痛みについて考えすぎているなら、注意を他のことに向けることで、痛みに耐える力をつけるのに役立つかもしれません。


本記事はブラウン大学マインドフルネスセンター所長Eric Loucks博士およびJMC主催”マインドフルネスに基づくプログラムの科学”を参考に執筆したものです。

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