Featured Video Play Icon

さまよう心は不幸せ? マインドフルネス論文解説

こんにちは!医師でマインドフルネス講師の植田真史です。

今日はちょっと趣向を変えて、論文を読んでみようという回にしたいと思っています。

今日読もうとしている論文は、A Wandering Mind Is An Unhappy Mindという、けっこう有名な2010年の論文になります。

 

英語の論文なんですけれども、できるだけわかりやすく皆さんと一緒に読んでいけたらと思っております。

ではさっそく説明に入っていきたいと思います。

これはどういう研究なのかと言いますと、背景から説明しますね。

 

人間って今起こっていないことに思いをめぐらせることができる唯一の動物ですよね、おそらく。

例えば、ご飯を食べていても仕事のことを考えたりとか、去年の嫌だったことを思い出したりとかですね。

将来への不安、将来の不安、過去への後悔とか、いろいろと頭の中を巡ってくるわけですよね。

 

こういう状態を「マインド・ワンダリング」、ワンダリングというのはさまようことなんですけれども、心がさまよっている状態というふうな意味で、マインド・ワンダリングと言います。

 

いま起こっていないことに思いを巡らせることができるっていうのは、人間が進化で獲得した稀有な能力なわけなんですけれども、これには実は感情的な代償を払っているんじゃないかというのが、問題提起なわけなんですよね。

どういうことかというと、多くの哲学や宗教的な伝統においては、幸せはもう今この瞬間に存在しているという趣旨のことが、いろんな文脈で言われています。

今に集中しようということを、例えば瞑想などを通じて、多くの宗教的な伝統において推奨されているというわけなんですよね。

 

マインド・ワンダリングを抑制して、今この瞬間に集中するということが勧められているわけなんですけれども、実際にワンダリング・マインド、さまよう心はアンハッピーマインドなのかと、不幸せな心なんだろうか、ということで、これを実際に調べてみたのがこの論文になります。

 

心があちこちさまよっていると、実際に不幸せに感じているんだろうかという疑問が、この論文の出発点になります。

これを調査するためにどうしたかといいますと、iPhone のアプリを開発しまして、2,250人にそのiPhone のアプリを入れてもらうということをやっております。

それで、この2,250人は58.8%男性、73.99%がアメリカ在住、平均年齢34歳ということだそうですが、アプリ入れてもらった人たちに、起きている間、ランダムな時間に通知をして、3つの質問に答えてもらいます。

1番は幸福度、2番は今やっていること、3番はマインド・ワンダリングしてましたか、ということですね。

別のことを考えてましたか、ということを聞くわけですね。

この研究のすごいところは、iPhone のアプリというものを利用して、今までではできなかったような多くの人数が、ランダムな時間に何をしていたかというのを、その瞬間に聞くことができるという、この方法なんですよね。

もしiPhone などがない時代であれば、調査員をこそこそ参加者について行かせて、今何をしているなというのを記録したりとか、いきなりその人に話しかけて、今幸せですかなんて聞かないといけない、みたいな話になっちゃうと思うんですけれども。

そんな手間はかけられないし、費用もかかりますのが、iPhone であればですねそれがすぐ

できるということで、文明の利器を利用した研究になります。

それでは、この質問をすると言いましたけれども、具体的にその質問の内容を見てみましょうかね。

1番は幸福度。

「今どんな気分ですか?」というのをみんなに聞くわけですね。

0から100まで、連続的な点数をつけてもらうわけです。

最悪というのがゼロです。最高というのが100です。

その間のどこをとってもいいんだと思います、連続的って書いてましたので。

もしかしたらチェックを入れてスライドさせて、そこの点数が記録されるということかもしれません。

そして2番の質問。

「今なにをしてますか?」っていうのは、22項目の中から選択することになっています。

そして3番の、マインド・ワンダリングしてましたか?別のことを考えてましたか?っていうのは、まず今に集中してましたという時は「いいえ」ですね。

そして「はい」の場合は3つに分かれます。

じゃあどんなことを考えてたんですかっていう3つに分かれて、好ましいことを考えてたというのと、嫌なことを考えてたっていうと、どちらでもないことっていう、3つに分かれています。

この実験をするとどうなったかっていう結果ですけれども、実は全サンプルを取ったもの、記録した結果のうちの46.9%でマインド・ワンダリングが起こっていたということなんですね。

人間は起きている間、いろんな活動してるんですけども、実にその46.9%ぐらいで、別のことを考えていたというわけなんです。もう半分近い状態ですね。

さらに、どの活動でも30%以上はマインド・ワンダリングが起きていたということで、例えば料理とか勉強とか、いろいろあると思うんですけれども、どの活動をとっても、最低30%はマインド・ワンダリングが起きているということなんですよね。

ただしメイキング・ラブ以外、性行為以外ということで、性行為の時は皆さん集中しているということになります。これ、メイキング・ラブの間に通知が鳴って、ちゃんと答えてくれるのもすごいなと思うんですけど(笑)

というわけで、マインド・ワンダリングは我々が予想しているより頻繁に起こっているということですね。

これが図になります。

論文の中の図を引用をしているんですけれども、この図はなにかというと、内容ごと、項目ごと、何をやっているかごとの幸せ度、これが35から95というのが幸せ度の目盛りですけども。

この活動、例えばワーキング、働いている時っていうのは、幸せ度がだいたいこの60ぐらいですかね。

という感じで、これはサンプルごとの頻度の多さを、玉の大きさで表していますね。

この「・・・」の小さいの(縦の線)が見えますかね?

この線が全体の幸福度の平均になるそうです。

例えばトーキング、会話をしているときというのは、わりと幸福度が高いのかなという感じですよね。

働いている時というのは、わりと幸福度が低いというのがわかったりします。

あっ、こちらで見れば良かったです、ごめんなさい、大きいのを作ってました。

ワーキングと、

トーキングですね。

というわけで、これが左上の表で、活動ごとの幸福度になります。

そして左下の表を取り上げて大きくして見てみたのがこちらなんですけれども、どうなっているかというと、マインド・ワンダリングをしてないとき、今に集中しているときの方が、この3つのマインド・ワンダリングをしているときに比べて、幸福度が高かったっていう結果なんですよね。

この上の3つは、喜ばしくないこと、不快なこと、そして普通のこと、そして好ましいことっていうことについて考えてたときのマインド・ワンダリングなんですけれども、そのどれよりも、マインド・ワンダリングしてないときの方が、幸福度が高いということなんですね。

ただし、今この好ましいことにマインドワンダリングしているときとは、そんなに差がないということで、有意な差はなかったということなんですけども、少なくともマインド・ワンダリングしてない時の方が幸福度は低くない、ということなんですよね。何を考えているにしてもですね。

というわけで、マインド・ワンダリングしている時は、していない時よりも幸福度が低い

、さらに何をしている時であっても、その結果が出ていたということなんですね。

それが結果②になります。

では、さらにもう一つ、アンハッピーとマインド・ワンダリングの関係なんですけども、アンハッピーの時にマインド・ワンダリングが起きやすいというのが、以前の研究でわかっていたそうなんですけども。

今回の研究では、マインド・ワンダリングをしていると、アンハッピーな気持ちにその後なりやすい、というのがまあ時系列を追うことができるので。示唆されたということで、これも新しい知見のうちの1つのようです。

それでは、結果その③にいきたいと思います。

まず、まとめからいきますと、幸福度の予測には何をしているか、ということよりも、何を考えているかを使うほうが、優れた予測ができるということなんですね。

どういうことかと言いますと、これは幸福度が同じ人、ある一人の人(Aさん)を選んで、ある時は幸福度が高かったけど、あるときは幸福度が低かったとしますよね。

そうすると、何でその差が出たのかっていうのを説明しようとしたときに、何をしているかというその活動によって説明ができたのが4.6%であったのに対して、マインド・ワンダリングをしていたかどうかによって説明ができたというのが、10.8%にのぼったということなんですよね。

なので、マインド・ワンダリングの方が、幸福度の差についてより説明をしてくれる、ということなんですよね。

 

次は、例えばAさんとBさんを比べて、AさんよりもBさんの方が幸福度がおしなべて高いとしますよね。

それを説明するのに、活動により説明できたのが3.2%に対して、マインド・ワンダリングをしているかどうかで説明できたのが17.7%であった、ということで、マインド・ワンダリングのほうがやっぱり説明をしてくれるということなんですよね。

つまり、幸福度の予測には、何をしているかよりも、何を考えているかを使う、つまりマインド・ワンダリングしているかどうかを使うほうが、優れた予測ができますよというのが、結果③になります。面白いですね。

結果①②③ときたわけですけども、まとめますと、人間の心はさまようと。46.9%の間、さまよっているということで。

“A human mind is an wandaring mind”って書いてましたね。

 

さらに、さまよう心っていうのはアンハッピーな心である、ということで

“Wandering mind is an unhappy mind”というふうに書いてありました。

これ、不幸なって書いてもよかったんですけど、不幸なっていうとちょっと強すぎる気がしたので、アンハッピーってそのまま書かせていただきました。

というわけで、面白い研究でしたね。

こちらの論文の説明は以上になります。

コメントを残す